然るに神は更に神命の遂行を急ぎたまうので、教祖は田地を売払わんことを乞われた。忍耐強き夫善兵衞殿も、一家の将来、子の将来、この前途を想うては、唯々と従う訳には行かぬ。教祖に白無垢を着せ、仏壇の前に座らせ、心中の苦悶を告げて、教祖を詰責さられた。
又真夜中に、家伝の実刀を取り出し、教祖の枕頭に立ちてこれを抜き、刀の威力によって憑物ならば退散せ、気違いなら鎮静せよと、涙を流しさめざめと泣かれたこともあった。
この夫の苦悶を見て、教祖は神一条の理を説き、神命の如何に重きかを説き明かされたが、家運は次第に傾き、親戚や村人からは笑われ、その間に立ちて夫の苦心せられるを見ては、人間としての教祖は、最早耐えることが出来なかた。
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