もし自分さへなかったら、神命も下らず、夫も苦労せず、子供達も難儀せず、親族の干渉もなく、村人の笑いもあらず、かくの如く思い詰められた教祖は、断然身を捨てて、人々の難儀を救わんと、強き覚悟を決められた。
時に屋敷内の井戸に身を投げんと飛び込まんとせられたのも、冬の一夜氏神の池に近づきて、将に身を躍らして飛び込まんとせられたのも、亦この決心の為である。然し井戸や池に近づきたまへば、忽ち身体の自由を失い、何処ともなく短気を出すのやないと聞えるので、教祖は忽然醒めたる如く、神命の尊さを自覚して、思い直して後へ戻られると、身は自由に動くのであった。
※元の神、実の神々と出会う処→ふるのさとへ!